福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた原子力防災対策
2011年3月に発生した福島第一原子力発電所事故(以下「福島原発事故」)では、大量の放射性物質が放出され、多くの住民の方々が避難を余儀なくされました。
避難にあたっては特定の施設に避難者が集中したり、道路が渋滞したりするなど様々な混乱が生じ、従来の原子力防災対策の問題点が明らかになりました。
福島原発事故での教訓を踏まえて、新たな原子力防災対策が決定
福島原発事故の教訓から、国は自治体等が原子力災害対策に係る計画を策定する際の科学的、客観的判断を支援するため、「原子力災害対策指針」を2012年10月に策定しました。
島根県でもそれを受け、「地域防災計画」や「広域避難計画」を策定・改正するなど、必要な対応を行っています。
教訓 1
想定を超えた範囲で避難を実施
当時の福島原発周辺では、原発から約10km圏内で原子力災害に備えた防災対策を実施していました。
しかし、福島原発事故は想定を超え、防災対策を準備していなかった地域でも避難や屋内退避が必要になり、大きな混乱が生じました。
事態の進展に応じて避難先を複数回移動する避難者も発生し、避難者の負担が増大しました。
対策 1
防災対策の範囲を拡大し、避難などの対策を整備
福島原発事故後は、教訓を踏まえ、あらかじめ防災対策をする区域を約30km圏に拡大しました。
そして区域を「原発から5km圏内(PAZ)」と「原発から5~30km圏内(UPZ)」に分け、各圏内に応じた避難や屋内退避を実施する体制を整備しています。
教訓 2
避難先や避難ルートが決まっておらず、混乱が発生
福島原発事故当時は、避難先や避難ルートがあらかじめ決められていませんでした。そのため、特定の施設に避難者が集中したり、道路が渋滞したりするなどの混乱が発生しました。
対策 2
避難計画を作成し、新たに「避難経由所」を設定
島根県では避難計画を作成し、あらかじめ具体的な避難先や避難ルートを決めています。
避難計画では、避難時の混乱を避けるため、避難先に向かう途中で立ち寄る「避難経由所」を設定し、避難所の振り分けや誘導などを行うことにしています。
教訓 3
安全に避難する準備ができていないまま要支援者の避難が行われ、健康状態が悪化
福島原発事故では、医療施設の入院患者や社会福祉施設の入所者など、健康状態への配慮が必要な要支援者の方もすぐに避難することが求められました。
そのため、健康状態を考慮し安全に避難する準備(福祉車両の確保等)ができていないまま避難が行われることになり、避難中や避難先で要支援者の方の健康状態が悪化し、亡くなるという事態が発生しました。
対策 3
健康状態を考慮し、安全に避難が実施できるよう様々な手段を確保
避難するとかえって健康状態が悪くなる方は、無理な避難をせず屋内退避を行い、避難先や福祉車両などの準備ができた後に避難を行います。
島根県では、事故の影響が大きいと想定される原発近隣においては、放射線防護機能がある施設などに屋内退避をする体制を整えているほか、福祉車両確保のため、中国5県のタクシー協会と協定※を締結しています。
※「原子力災害時等における福祉タクシーによる緊急輸送等に関する協定」(平成29年7月24日締結)