特 集

島根原子力発電所の自然災害対策


 原子力発電所は、将来起こり得る最大規模の自然災害を想定し、それに対し十分な安全性を保てることを確認しなければなりません。
 2011年3月に東日本大震災が発生した時、福島第一原子力発電所は自然災害を発端に、同時に複数の安全機能を失って重大事故に至りました。
 この教訓をもとに作られた国の規制基準では自然災害対策に関する規制が大幅に強化されており、島根原子力発電所における自然災害の想定や対策についても、この新たな規制基準に基づき審査されています。

新規制基準に基づく厳格な審査

 国の原子力規制委員会は、自然災害に関する調査結果に少しでも不確かな点があり、従来より大規模な災害が起きる可能性を否定できない場合は、規模想定の引き上げを要求しています。その一例として、活断層の調査(※1)があります。

 島根原子力発電所の近くにある「宍道断層」は中国電力(株)によって特に詳細な調査が行われており、調査の結果、その断層の長さは約22kmであると従来評価されていました。

 これに対し原子力規制委員会は「従来の調査は断層端部の設定根拠が不十分」と指摘し、宍道断層についての追加調査を求めました。

 

(※1)一般的に、地震の規模は断層が長くなるほど大きくなるため、発電所敷地での地震の強さを精密に評価するためには、敷地周辺に存在する活断層(将来活動する可能性のある断層)の位置や長さを調査・評価する必要があります。


 

自然災害対策に関する

安全性向上への取り組み


 追加調査では、宍道断層の活動性を示す新たな証拠は見つかりませんでした。
 しかし、発電所の安全性に万全を期す観点で、東端・西端の位置及び活断層の長さの評価が中国電力(株)により見直されました。

 

島根県原子力安全顧問の意見

 中国電力(株)の評価が適切かどうかは、島根県の原子力安全顧問にも確認を受けています。
 宍道断層の評価結果に関して、地震地質学を専門とする顧問からは、西端については「追加調査で活断層は認められなかったが、活断層の存在を100%否定できる根拠がないため安全を考慮して見直したもの(約3km延長)と理解している」との意見が出されました。
 また、東端については「安全側の評価ではある」と同時に、「従来の東端付近では断層の末端部の特徴を示している上、追加調査でも活動性を示す新たなデータが見つかっていない中で14kmも延ばす必要があったかは、科学的には少し疑問」との意見が出されました。

顧問会議小会議の様子(令和2年8月 TV会議)
[スクリーン:島根県原子力安全顧問 手前:中国電力(株)、県担当職員]

 

 島根原子力発電所では、この宍道断層の評価結果等をもとに発電所敷地で起こり得る最大の地震動(基準地震動)を設定しており、従来よりも厳しい条件での耐震性を確認することで、安全性の更なる向上が図られています。
 なお、基準地震動の策定に当たっては宍道断層をはじめとした活断層調査の結果だけでなく、「震源を特定せず策定する地震動」(※2)の評価結果も考慮されています。

 

(※2) 規制基準で定められた方法に基づき、全国で実際に起こった地震が発電所の真下で発生したと想定した場合の揺れの強さ。

 


審査によって見直された

宍戸断層の長さの評価


西端の見直し

断層長さを約3km延長


【断層長さの評価結果】
 古浦沖等の陸と海の境界付近では詳細な調査が困難であるため調査が実施できていないことから、「断層が通過している可能性を完全には否定できない」と評価されました。
 そのため、西端位置を「女島」に見直し、断層長さを3km延長することとなりました。

東端の見直し

断層長さを約14km延長


【断層長さの評価結果】
 境水道沿いの陸と海の境界付近では詳細な調査が困難であるため調査が実施できていないこと等から、「断層が通過している可能性を完全には否定できない」と評価されました。
 そのため、東端位置を「美保関町東方沖合い」に見直し、断層長さを14km延長することとなりました。