この美味しいには、
理由がある!

祖父母が苦労し手塩にかけたブドウ園
毎年たわわに実るその恵みを
さらに美味しく、さらに上質に!
夏から秋にかけては果物もいちだんと美味しくなる季節。大地の恵み、自然の豊かさを味わうようなブドウもそのひとつですが、島根県でも生産が盛んなシャインマスカットのおいしさは格別。ジューシーで大粒、みずみずしい爽やかな甘さ、皮ごと食べられるのでスイーツとの相性もバツグン。平成18年に品種登録され、たちまち人気となった品種です。
今回訪れたのは雲南市加茂町の静かな山あいにあるブドウ園。昼夜の寒暖差、程よい湿度と日照時間、山々を爽やかに下る風と、ブドウづくりには理想的な土地に、大きなビニールハウスが建ち並んでいます。ハウスの中には高さ1.7メートルほどのブドウ棚が一面に広がり、そこにデラウェア、クイーンセブン、ピオーネ、そしてシャインマスカットなどがたわわに、まさに収穫の秋をよろこぶかのように実っています。ブドウ園を経営する星野和志さんは「6棟のハウスで63アールの栽培面積があり、そのうち半分以上がシャインマスカットです」と話します。
昭和30年代半ばから加茂町三代地区で多くの農家が参画し産地化の取り組みが始まったブドウづくり。星野さんの祖父母もその農家のひとつでした。しかしブドウづくりは簡単ではなく、幾多の風水害や大雪などの苦難も経験しながら「品質の良いブドウ」をつくるためにひたすら技術の向上と努力を重ね、ついには昭和56年に農林水産大臣賞を受賞するまでになりました。小さい頃から農業を仕事にとの思いを抱いていた星野さんは県立農業大学校を経て市内の農業法人で野菜づくりに励んでいましたが10年ほど前に祖父が亡くなったことで、その志を承継したいと師匠と呼ぶ親戚のブドウ農家で熱心に修行をし、8年前に祖父母が大切にしてきたブドウ園を引き継ぎました。

選ばれる商品になるにはやはり品質第一。糖度、酸味のバランス、果皮の柔らかさ、また食べたいとリピートしてもらえるものを目標にブドウづくりに励んでいます。

初夏にはホタルが舞う姿も見られる自然の豊かさ、空気が澄んでいて水がきれいな加茂町三代地区にあるブドウ園のビニールハウス。

星野さんのギアファームでは「星のぶどう」の名称でオンライン販売や直販(要予約)を行う他、道の駅などの地元直売所、スーパーなどへも卸しています。ギフト用商品も充実しています。
ブドウの木への思いやりが
おいしい実りにつながる
星野さんのシャインマスカットづくりは積雪の時期が終わる頃のハウス屋根へのビニール張りから始まります。春の陽をあびてハウス内の温度が上がるとブドウはいっせいに発芽し、4月末に花が咲きます。ここで房ごとに花穂整形という房の大きさを整える作業を行い、種をなくすジベレリン処理をします。房の外側に均一に実がつくよう粒の間引きをし、小さいながらもほぼ形になるのが5月。そこから8月からの収穫に向けてじっくりと時間をかけて大きくし、糖度が18度以上になるよう育てていきます。こうしたブドウ栽培の工程で肝心なのは花の時期の管理。天候にも左右され、枝も伸びようとするので、花の方に十分な栄養が行くようにしなければなりません。またシャインマスカットは苗木を植えてから3年で実がつくようになり、その後30年近く収穫ができるので、適宜な剪定や土づくりなどで木本来の力を養うことも重要。「堆肥を入れるために木のそばに穴を掘りますが、そのとき木の根が傷ついたりすると後々に影響が出るので気をつけて作業します」と木への思いやりも大切といいます。

ブドウ園ではシャインマスカットの他、クイーンセブン(写真)、クイーンニーナ、島根県オリジナル品種「神紅(しんく)」など様々なブドウを手掛けています。
星野さんには夢があります。それは自分たちや仲間がつくるブドウが地域の自慢に、そして魅力になることです。さらに仲間づくり・後継者づくりもそれに加わります。「昨年、ここで一緒にブドウをつくっていた一人が独立することができました。今後も若手を育成し、雲南市のブドウづくりを次の世代に引き継ぎたい。昭和の最盛期には加茂町内で50軒あった生産農家も今では8軒です。だから今あるものを引き継ぎ、残していくことも大事」と星野さん。「まわりの豊かな自然があってこそ農業が成り立ちます。祖父母たちが紡いできた地域のストーリーと共に品質の良いブドウを届けていきたい」と話していただきました。

ギアファーム代表 星野和志さん
■取材協力
ギアファーム
※ギアファームの各種ブドウは9月までが主な出荷シーズンで10月初めごろには出荷が終了します。ご留意ください。