神楽が盛んな島根県内には、およそ230の保存団体があり、「出雲神楽」「石見神楽」「隠岐神楽」に分かれます。その中で出雲地方を中心とする神楽が「出雲神楽」と呼ばれています。
出雲神楽の特色は、神事としての色合いが濃く、能・狂言の影響が見られる点だと言われています。「神様を楽しませるための舞」が起源とされる神楽は、もともと神に仕える神職が舞っていましたが、江戸時代の中頃からは民衆も関わるようになり、民衆が楽しむものへと変化していきました。その中にあっても、出雲神楽は序盤に場を祓い清める「七座」の神事舞が行われるなど、神に奉納するための神楽を守り続けています。
一方で、「神能」と呼ばれるストーリー仕立ての舞もあり、「国譲り」や「八岐大蛇(やまたのおろち)」など、出雲地方にゆかりの演目が観る人を楽しませます。松江市鹿島町に伝わる「佐陀(さだ)神能(表紙)」は神職による神楽として伝承されてきましたが、出雲市大社の「大土地(おおどち)神楽」は、江戸時代から民衆が行ってきた神楽として知られており、どちらの演目にも能・狂言の影響が濃く見られます。約70ある出雲神楽の保存団体は、オロチに限ってみても、その姿や立ち居振る舞いに個性があり、そうした伝統が人から人へ連綿と受け継がれています。
神事と娯楽の要素をともに伝える
出雲神楽