シリーズ
この美味しいには、
理由がある!
安来の米粉

良質米の産地でつくられる安来の米粉
地域農業の維持と消費の多様化に応えながら
健康な食の世界を広げています

米を粉に挽いたものというと、もち米から作る白玉粉、うるち米から作る上新粉が思い浮かびます。だんごやおかき、和菓子などの原料として昔から親しまれていますが、近年ではより微細に加工することで、パンやクッキー、ケーキ、てんぷら粉に使用されるなど利用が広がっています。その背景には小麦と比べて油の吸収率が低いこと、グルテンが含まれないため小麦アレルギーの人も安心して食べられることなどがあり、健康志向や食の多様化、国産で安心・安全なものを求めるニーズに応えています。その米粉づくりに取り組んでいるのが安来市東比田の中村一人(なかむらかずと)さんです。

中村さんは産業体験を利用して愛知県からIターンし、東比田地区で有機・無農薬での野菜作りと稲作を始めました。しかし地域の農業は生産者の高齢化や後継者難で状況は厳しく、米の消費量も年々下がり、せっかく美味しい米を作っても消費されません。このままでは田んぼもなくなり美しい里山の風景もなくなってしまう。地域の農業を維持していくためにも新しい米の食べ方はないかと思案し、米粉に可能性を感じたといいます。

中村さんはまず米粉でパンを作ってみましたが、あまり上手くいかなかったため、だったら麺にしてみようと生麺を開発。しかしこれでは売りにくいことがわかり乾燥麺に変更したものの、茹でたら形が崩れたなどの意見も寄せられ、その課題を自らの工夫と研究で乗り越えるなど「失敗と試行錯誤の繰り返しでした」とふりかえります。そうして完成したのがフィジリタイプ(ねじり型)のショートパスタ「まるでパスタな米粉麺」。原材料はきぬむすめやコシヒカリなどふつうに食べてもバツグンに美味しい比田米の米粉100%です。中村さんの工房で作られる米粉・米粉麺は主に首都圏、安来市内の道の駅などで販売され、消費者の健康志向に応えるこだわり食品として人気となっています。「安来の米粉が小麦の代用から脱却し、美味しく安全に食べることのできる定番のひとつとなるよう作りつづけていきたい」と話していただきました。

地区内の農家から米を買い入れたり、新たに雇用を生むなど地域密着型の米粉づくりを行っています。

今では米粉麺のバリエーションも多彩となり、ねじり型のフィジリ、貝殻型のコンキリエ、ロングタイプのフィットチーネ、さらに米うどん、米そうめんと様々な食感が楽しめるようになっています。

きぬむすめの米粉100%でつくる
ケーキはもっちりとしたやさしい味わい

安来の米粉はケーキ作りでも活躍しています。安来市赤江町の永田健志(ながたたけし)さんは自家の田んぼで作ったきぬむすめ100%の米粉シフォンケーキが看板商品の店を経営しています。もともとは妻の母親が趣味で始めたシフォンケーキづくりでしたが、やがて評判となって小さなケーキ店となり、米粉ならではのやさしい持ち味で人々を癒すようになりました。

米粉で作るケーキはもっちりとした食感で、ほんのりとした米の香りがあるのが特徴。「小麦で作るよりもやや膨らみにくく、水分の含ませ方もデリケートな調合が必要ですが、やはり米粉は美味しくヘルシーなので、こだわって作っています」と永田さん。米粉に合わせる牛乳や卵も雲南市や地元産の上質なものを使います。

「米粉ならではの食感や美味しさを求める方はもちろん、身体のことを考えて米粉で作ったものを選ぶ方も増えています。小麦アレルギーがあって普通のケーキが食べられないという方もわざわざ遠くから買いに来られますから、私たちもそれに応えなくては」と米粉へのこだわりを話されます。

店のショーケースには人気のシフォンケーキをはじめ、チーズスフレ、ロールケーキ、ロールパンなどが並びます。そこには米粉でこんなものも作れるということを知ってもらい、食べて好きになってほしいとの思いがありました。

一品一品に心を込めた手づくりで米粉のケーキは作られています。

お店では、米粉で作ったパンなども人気です。

■取材協力
 まいもん工房
 しふぉんながた