シリーズ
この美味しいには、
理由がある!

島根県が開発し、島根県だけで栽培される
高級メロンがあるのをご存知でしょうか。
黄金色の果皮、熟すとほんのり金色になる果肉の芳醇な香りと甘さ。
それが七月頃に旬を迎え、一年でこの時期しか味わえない
「ゴールデンパールメロン」です。

ゴールデンパールメロン誕生秘話

島根県オリジナル品種のメロンづくりの取り組みは古く、1957年に露地栽培用パール系メロンの黄皮白肉品種「新芳露」を開発したことを緒に、それをハウス栽培用へと品種育成する取り組みが1962年から始められ、その成果として1974年に「島交1号」が公表されました。その品質は高級で評価も優れたものでしたが、温度・湿度・病害虫対策などの栽培管理がとても繊細で難しく、生産する農家もごくわずか。ゆえに「幻のメロン」とも言われていました。それでも雲南市の熱心な生産者が半世紀近く、ていねいに愛しむように作りつづけ島根県オリジナルメロンを守ってきました。県では「この系統を絶やしてはいけない」と2012年に「将来の島根農業を支える商品づくりプロジェクト」を立ち上げ、県内のメロン農家に参加してもらい栽培研究を続け、2015年に改良種「島交4843」が完成。「島交1号」の果実品質を維持し病気にも強い高級メロンとして、その有望性が確認されました。「ゴールデンパールメロン」(島交1号・島交4843の2系統)はこのように半世紀以上もの長い歳月をかけた多くの人々の努力と英知が結実した島根県ならではの品種となりました。一般的なメロンとは一味違う、とろけるような果肉の甘さが楽しめる夏の逸品です。

かつての幻のメロンをスマート農業で安定栽培
この美味しさをたくさんの人に届けたい

松江市東出雲町の農場で「ゴールデンパールメロン」栽培をする渡部旭さんも「次世代にこのメロンを伝えるために」と県のプロジェクトに参加された一人です。現在は専用のハウス6棟で毎年3月から8月上旬にかけて栽培に取り組んでいますが、やはりデリケートな品種なので難しい面もあるといいます。種蒔から収穫までが短期間で、どんどん成長していくためやり直しが効かないこと。加えて温度管理がいちばんの難題でした。

「発芽、開花、そして果実の肥大期などステージごとに適切な温度が違うので、以前は手作業でハウスを開け閉めして温度管理をしていましたが大変でした。転機は作業にスマート農業を導入したことです。コンピュータ制御によりハウスの温度管理を自動化したことで労力が軽減され、メロンと向き合う時間もより多くとれるようになりました」といいます。それにより取り組み当初は作付の半分ほどだった収穫率も大きく改善されて順調に出荷できるようになり、需要の高い夏のギフト市場にも応えることができる収穫量になったといいます。

「ゴールデンパールメロンは玉太り1.3キロ以上、糖度は14度以上などの基準をクリアしたものを厳選出荷しています。県のプロジェクト後に残った生産者は自分一人でしたが、今では生産者仲間も増え、それぞれが丹精込めて作っています。口に入れたときの芳醇な香り、たっぷりとした果汁の美味しさ、とろけるような甘さをぜひ味わってください」と笑顔で語ってくれました。

■取材協力/島根県農業技術センター栽培研究部・㈲安藤農園
■写真提供/八百万マーケット

生産者の渡部旭さん。自分がワクワクする野菜・果物を作りみなさんに届けるために、人のやらないことに取り組んでいます。新たな販路と栽培技術を構築し、ブランド化につながるものづくりを目指します。

渡部さんの農場では5年前にスマート農業の設備とノウハウを導入しました。安定した品質の維持に大きく役立っています。