シリーズ
『見つけよう、しまねのコト。』

出雲ナンキン 
気品ある愛らしい姿が魅力 出雲ナンキン

三大地金の一つに数えられ、
不昧公が愛したとされる金魚

 小さな頭にぷっくりと膨らんだお腹。白く輝く体に美しく散る朱色―まるで浮世絵美人を思わせる優美な姿の「出雲ナンキン」は、江戸時代の中頃から松江藩の城下で飼育されるようになりました。
 松平不昧公が愛した金魚としても知られており、高知県の「トサキン」、愛知県の「ジキン」と並んで「三大地金」の一つに数えられています。1982年には島根県の天然記念物に指定されました。
 成長すると「え、これが金魚?」と思うくらい大きくなる出雲ナンキン。生まれて3年で体長が15センチを超え、頭部に肉瘤や背びれがないその独特な姿から、海外では「エッグフィッシュ」とも呼ばれています。また、4つに分かれた尾も特徴です。
 松江城の堀端にある松江歴史館では、前庭の池に10匹ほどの出雲ナンキンが泳いでいます。また美しい日本庭園を眺めることができる館内の喫茶室では、7、8月に現代の名工にも選ばれた和菓子職人・伊丹二夫さんによって、出雲ナンキンをイメージした上生菓子が提供されます。食べるのがもったいないほど可愛らしく、添えられた冷抹茶とともに夏の暑さを忘れさせてくれます。

出雲ナンキンの魅力を
もっと広めていきたい

 出雲ナンキンの愛好家は全国にいますが、出雲地方では地域ごとに会が作られています。そのうちの一つ「出雲なんきん愛好会」会長の須谷保さんは、自宅の庭に水槽を設けて飼育しています。4月に産卵させて5月に選別、7月から10月までは3日に一度の割合で水換えを行うといいます。この頃は、大量にエサを与えるので、すぐに水が汚れてしまうそう。「普通の家庭の3軒分くらいは水道代がかかりますわ」と笑う顔には、出雲ナンキンへの愛情があふれています。
 1万匹ほど生まれる稚魚のうち、品評会に出せるのは5匹程度。独特の体形は、小さい頃にたくさん食べさせることで出来上がります。体色を整えるために、酢や塩を使って赤色を抜いていく作業も神経を使うそうで、「生まれ三分、飼い七分」といわれるほど、美しい出雲ナンキンは飼育者の努力の結晶なのです。年に一度開かれる品評会には、そんな「泳ぐ宝石」たちが集まります。昨年は新型コロナウイルス感染症のため中止になりましたが、「今年はぜひやりたい。この地方ならではの美しい金魚を絶やさないためにも、出雲ナンキンの魅力をもっと広めたい」と、須谷さんは意気込んでいます。